アルフレッド・ヒッチコック「The Birds」を見る

 たまたまBS2でやっていて、かなり前から見たい映画だったので迷わず鑑賞しました。この作品って1963年公開なんですよね。うーむ、古いもの好きだなぁ、私って。
 CG技術など一切無い時代なので当然全て実写です。しかし、それ故の怖さというかリアリズムが感じられて、今のホラー作品よりもずっと本能的な恐怖が感じられる作品でした。
 題通りにテーマは「鳥」です。開始直後から空には大量の鳥が飛んでいます、私の近くでは空が斑模様になるまで鳥が飛ぶことが無いために、それだけで異様な雰囲気を感じてしまいます。その間もさまざまな人間模様があるのですが、ストーリーに絡む気配がありませんので省略。
 後半に入ると本当に人を襲いだすのですが、とにかく襲ってくる鳥が凶悪です。まず子供を狙い、転んだ人を狙い、一人でいる人を狙い、怖がっている人を狙い・・・やってることがえげつないです。
 人間側も当然ただ襲われるのを待つわけではないですが、とにかくまとまりません。やたら聖書を引用して破滅だと嘆いてみたり、自称鳥に詳しい人がやたらと口をだしてみたり、とにかく自我が強い人ばかりでまとまらない話ばかりを繰り返して時間を費やすばかり・・・多様な人間の考えと、それがいかにマイナスに働くかを考えさせられました。
 やはり一番印象的なシーンは最後でしょう。昼なのに曇り空で薄暗く、光が微妙に差し込まれている聖書に出てきそうな絵なのに地面は鳥で埋め尽くされている光景は、世界は人間のためにあるのではない、という監督の無言のメッセージのように思えます。
 やはりグラフィック面ではどうしようもないですが、今の映画とは比べ物にならないほどひきつけられる作品でした。監督の宗教観がよく出ていて見る人を選ぶ感じはありますけど、非常に興味深いものでした。普通に良作だと思います。